大学必携ノートパソコンの選び方

三重大学では、2018年度入学生からノートパソコン(PC)を必携化し、授業や演習,レポート作成などを通じてノートPCを活用して学ぶ環境を整えています。

しかし、この必携PCは、入学生の皆さんにとって決して安くない買い物です。どのような視点でスペックを知り、PCの機種を選んだら良いか、PCの機種選定にくわしい近藤利夫先生に聞いてみました。


Q)PCの性能を決める要素にはどのようなものがありますか?

近藤先生(以下 K):PCの性能は、内蔵するCPUの性能と記憶装置の構成(メモリ容量、ストレージの種類[SSDかHDD])でほぼ決まります。

より性能の高いCPUと、適切な構成の記憶装置を搭載していることがPC選定上の最大のポイントです。この考え方に基づき、情報工学科の必携PCの推奨スペックでは、記憶装置に関して、メモリ容量を4GB以上、ストレージとしてHDDより高性能なSSDとしています。

Q)なるほど、ではCPUの性能はどうやったら分かりますか?

K)CPU性能はベンチマークスコアで規定されます。ベンチマークスコアとは性能評価プログラム(ベンチマーク)を使った性能評価結果の成績で、例えばPassMark Single Thread Performancehttps://www.cpubenchmark.net/singleThread.html)などのWebページで公開されています。

Q) ベンチマークはどのように見たら良いですか?

K)この参考ページを開いてみましょう.中央に表示される棒グラフの右側の数値がベンチマークスコアで、数値が大きいほど計算処理性能が高いことを示します。一番右に表示されているのは目安となる価格(USドル)です。Webブラウザの「ページ内検索」機能を使って、購入を検討しているノートPCが搭載しているCPUの型番を検索すれば簡単にスコアを知ることができます。

Q)このベンチマークスコアは正確なんですか?

K)スコア一覧ページを検索して見つかるスコアと、その前後のCPUの型番や動作周波数を見比べると、量販店などで店員が紹介するような「Celeron、Pentiumは低性能、Core iは番号が大きいほど高性能」といった簡易的な性能判定法と、ベンチマークスコアとは必ずしも一致しないことが分かります。例えばモバイル用ノートPCに使われいる代表的なCPUである「Intel Core m3-7Y30」のベンチマークスコアは1282(2018/1/24現在)で,一般的にこれより高性能と言われているCore i3-6006Uのベンチマークスコア(1140)よりも大きい値になっています.Intel Core m3-7Y30が搭載されているノートPCには、重量も軽く堅牢生も優れていて10万円で購入できるものもあり、新入生向けに有力な選択肢になると思います。

ベンチマークスコアは、評価プログラムを実際に動作させて実行時間を測った結果に基づいた値であるため、簡易的な判定法に比べると、はるかに正確です。とはいえ、評価プログラムの内容が異なる別のベンチマークを用いる場合には、スコアの大きさに関するCPUの並び順がかなり入れ替わることが起こります。これは、CPUには処理内容に関し得意不得意があるからです。従って、本来は、数あるベンチマークの中から、評価内容が自分の用途に合致する適切なものを選択することが必要です。

Q) 今回,先生が PassMark Single Thread Performance を紹介された理由は何ですか?

K)PassMarkは、オーストラリア・シドニーに本社を置いているPassmark Softwareが提供している複数の評価プログラムからなる総合ベンチマークです。

このPassMarkは、いくつもの総合ベンチマークの中で最良と言えるわけではありませんが、市販PCに採用されているほとんどすべてのCPUのスコアがWebページに公開されており、その値を検索により簡単に知ることができる点で優れています。PassMarkのうち、広く利用されているのは並列処理による高速化能力まで評価するCPU Markですが、体感上重要な逐次処理性能がスコアに表れ難い欠点があります。そこで、推奨スペックのベンチマークとしては、逐次処理性能を直接評価するSingle Thread Performanceを今回は紹介しました。

情報工学コースはICTの専門家を育成します。一般的に言われている噂や印象評価に惑わされず、納得するまで自分で調べる姿勢を入学生の皆さんにも持ってもらいたいと考えています。


近藤先生,どうもありがとうございました.